コラム

9月に入り、模試の予定が次々とカレンダーに並び始めた人も多いのではないでしょうか。夏休みにあれだけ頑張ったのに、返ってきた判定を見て思わずため息……そんな経験、きっと誰にでもあります。

でも、断言します。模試の本当の価値は、受けている最中でも、判定が出た瞬間でもなく、その後の数日間にあります。同じ模試を受けた二人でも、その後の過ごし方で3か月後の学力にはっきり差がつきます。今日は、秋の模試を「成績アップの装置」に変えるための7つの活用法をお伝えします。

1. 判定より「順位の推移」と「科目バランス」を見る

返却された成績表を開いて、まずどこを見ますか。多くの人はA〜E判定のアルファベットに目が行きます。しかし判定は、その時点の得点を志望者集団の中に置いたときの目安にすぎません。秋の模試はまだ全範囲が終わっていない受験生も多く、判定は今後いくらでも動きます。

見るべきなのは、前回からの偏差値の推移科目ごとのバランスです。全体の偏差値が横ばいでも、英語が3上がり数学が3下がっていれば、それは「停滞」ではなく「勉強の配分が偏っていた」というメッセージです。判定という一文字ではなく、数字の動きから自分の勉強を読み取ってください。

もう一つ見落としがちなのが、大問ごとの得点率です。総合点が同じ60点でも、全分野で6割の人と、得意分野で9割・苦手分野で3割の人とでは、やるべきことが全く違います。成績表の分野別グラフは、判定欄よりずっと多くのことを教えてくれます。

2. 復習は「解けなかった理由」で3つに仕分ける

間違えた問題をただ解き直すだけでは、時間の割に効果が出ません。おすすめは、間違いを次の3種類に仕分けることです。

  • 知らなかった……知識・公式・単語そのものが頭になかった
  • 知っていたのに使えなかった……知識はあったが、この場面で使うと気づけなかった
  • ミスした……計算間違い、読み違い、マークずれ

この3つは対策が全く違います。1つ目はインプット不足なので教科書や単語帳に戻る。2つ目は演習量と「型」の不足なので、似た問題を集中的に解く。3つ目は手順の問題なので、見直しのタイミングや途中式の書き方といった「作業のルール」を決め直す。仕分けをするだけで、次に何をすべきかが自動的に見えてきます。

3. 復習は模試当日〜3日以内が勝負

成績表が返ってくるのは1か月後。それまで待っていては、自分がどう考えて解いたのかをすっかり忘れてしまいます。復習の主役は、返却前の「記憶が新しいうちの自己採点と解き直し」です。

理想は、模試を受けたその日か翌日に自己採点をして、間違えた問題に印をつけ、3日以内に解き直すこと。「あの大問、時間が足りなくて焦った」「この選択肢で最後まで迷った」——そうした感覚が残っているうちの復習は、後からやる復習の何倍も濃くなります。返却された成績表は、その復習の答え合わせだと考えてください。

また、模試の解説冊子は市販の問題集に劣らない良質な教材です。正解した問題でも、「なんとなく選んだ」ものは解説に目を通しておきましょう。まぐれの正解を放置すると、次に同じ形で出たときに必ず失点します。

4. 「時間配分の記録」を残しておく

模試は学力だけでなく、時間の使い方を試す場でもあります。試験が終わったら、問題用紙の余白に「大問1に何分かかったか」「どこで詰まったか」をメモしておきましょう。

入試本番で崩れる人の多くは、知識が足りないのではなく、1つの問題に固執して後半を落としています。模試のたびに時間配分を記録していけば、「自分は大問2で沼にはまりやすい」といった癖が見えてきます。癖がわかれば、「5分考えて糸口が見えなければ飛ばす」といった自分ルールを作れます。これは本番で確実に効いてくる財産です。

5. 「捨てる問題」を決める練習をする

満点を取る必要はありません。志望校の合格ラインが6割なら、4割は落としてよいのです。にもかかわらず、真面目な人ほど全問題に均等に立ち向かい、取れるはずの標準問題を時間切れで落としてしまいます。

模試は「捨てる練習」ができる貴重な機会です。問題を見渡して、確実に取れる問題から手をつける。難問だと判断したら潔く後回しにする。この判断力は、練習でしか身につきません。解ける問題を全部拾えたかどうかを、得点と同じくらい大事な指標にしてください。

6. 弱点は「単元名」ではなく「1行の言葉」で記録する

「二次関数が苦手」とノートに書いても、対策には結びつきません。もっと細かく、「二次関数の最大最小で、軸が定義域の外にある場合の場合分けを忘れる」と書けば、明日やるべきことが決まります。

模試ごとに、こうした一行メモを3〜5個だけ書き溜めていく「弱点ノート」を作ってみてください。分厚いまとめノートは必要ありません。1回の模試につき数行。それが半年たまれば、入試直前に見返す最強のチェックリストになります。実際、試験会場でこのノートだけを持って行く先輩は少なくありません。

さらに、この一行メモには「いつ気づいたか」の日付を添えておくと効果的です。同じ内容が2回、3回と登場したら、それはあなたが繰り返し落としている本当の弱点だという合図。優先的に時間を割く単元が、迷わず決まります。

7. 結果は「事実」として受け取り、感情と切り離す

ここが一番大切かもしれません。判定が悪かったとき、多くの人が「自分はダメだ」と受け止めてしまいます。けれど模試の結果は、あなたの価値ではなく、今の時点の状態を測った測定値にすぎません。体重計に乗るのと同じで、数字は責めるためではなく、次の行動を決めるためにあります。

落ち込むこと自体は自然な反応です。半日は落ち込んでいい。ただし翌日には、「では、どの単元から手をつけるか」という問いに切り替える。この切り替えの速さが、秋以降の伸びを大きく左右します。逆に判定が良かったときも、油断せず「取りこぼした問題は何だったか」を確認しておきましょう。

そして、模試は一人で受けているようで、実は同じ日に何万人もの受験生が同じ問題に向き合っています。うまくいかなかった日も、悔しさを感じているのはあなただけではありません。その悔しさを次の一問に向けられた人から、順番に伸びていきます。

まとめ:模試は成績表ではなく「行動リスト」を持ち帰るもの

模試を受けるたびに、判定という結果を1つ持ち帰るのか、それとも「明日から何をするか」という行動リストを持ち帰るのか。この違いが、半年後にはっきりとした学力差になって現れます。

今のあなたの判定は、今のあなたの努力の途中経過であって、ゴールの予告ではありません。秋から冬にかけて、成績が大きく伸びる人を私たちは毎年見てきました。その人たちに共通しているのは、特別な才能ではなく、模試のあとの数日間を丁寧に過ごしていたことです。

次の模試が返ってきたら、まず深呼吸をして、この記事の7つを思い出してみてください。あなたの努力は、必ず数字になって追いついてきます。焦らず、一つずつ進んでいきましょう。