コラム

夏休みが終わり、学校では実力テストや模試が続く時期になりました。「頑張ったつもりなのに、思ったより点が伸びていない……」と、返ってきた答案を見てため息をついている人もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。模試の本当の価値は、点数そのものではなく「受けたあとにどう使うか」にあります。今日は、模試や定期テストを「がっかりする紙」から「成績を押し上げる最強の教材」に変えるための具体的な方法をお伝えします。

1. 模試の点数は「今の実力」ではなく「今の課題リスト」

まず考え方を変えましょう。模試の偏差値は、あなたの能力を評価する成績表ではありません。「次に何を勉強すればいいかを教えてくれる案内板」です。60点だったということは、40点分の伸びしろがどこにあるかを、わざわざ時間とお金をかけて調べてもらったということ。これほど親切なデータはありません。

実際、成績が伸びる生徒とそうでない生徒の差は、模試を受けた直後の行動に表れます。伸びる生徒は返却された答案に線を引き、書き込みをして、ぼろぼろにしています。伸び悩む生徒は、点数だけ見てファイルにしまってしまいます。同じ模試を受けても、得られるものはまったく違うのです。まずは「点数に一喜一憂する時間を5分で終わらせる」と決めてしまいましょう。

2. 復習は「解き直し」より先に「間違いの分類」から

模試の復習というと、すぐに解き直しを始める人が多いのですが、その前にやってほしい作業があります。それが間違えた問題の分類です。すべての×を、次の4つに仕分けしてみてください。

  • A:知識がなかった — 公式や単語、用語をそもそも知らなかった
  • B:知っていたのに使えなかった — 覚えてはいたが、この場面で使うと気づけなかった
  • C:途中でミスした — 計算間違い、符号ミス、読み間違い
  • D:時間が足りなかった — 解けたはずだが手が回らなかった

この分類が大事なのは、タイプごとに対策がまったく違うからです。Aは暗記・インプットの問題なので教科書や参考書に戻る。Bは演習量の問題なので、似た問題を集中的に解く。Cは手順やチェック方法の問題。Dは時間配分・解く順番の戦略の問題です。分類せずに全部同じように解き直すのは、風邪も骨折も同じ薬で治そうとするようなものです。

3. 「あと5点」が眠っているのはケアレスミスの中

分類してみると、多くの人がCのケアレスミスの多さに驚きます。「本当は解けたのに」と思うと悔しいですが、ここは最も効率よく点が拾える宝の山です。

おすすめは「ミスノート」を1冊作ること。ノートに、間違えた内容ではなくミスの癖だけを書きためていきます。「マイナスの符号を落とす」「問題文の『すべて選べ』を見落とす」「英作文で三単現のsを忘れる」など。書き続けると、自分のミスが数パターンに集中していることが見えてきます。そうしたらテスト直前にそのページを読むだけで、同じ失点をぐっと減らせます。ケアレスミスは「不注意」ではなく「まだ対策していない癖」だと考えると、対処できるものに変わります。

4. 解説を読んで「わかった」で止めない

模試の解説はとてもよくできていますが、読んで納得しただけでは実力になりません。理解と再現は別の力だからです。

そこで、解説を読んだあとに必ず「解説を閉じて、自分の言葉で解き直す」ところまでやってください。さらに効果的なのが、誰かに説明するつもりで声に出して解き方をたどる方法です。「まずこの条件に注目して、だからこの公式が使えて……」と説明できれば本物です。途中で詰まったら、そこがまだ理解できていない箇所。この「説明できるか」テストは、参考書を何周するよりも確実に穴を見つけてくれます。

もう一つ意識してほしいのが、「なぜその解き方を思いついたのか」まで拾うことです。解説には答えへの道筋は書いてありますが、「なぜ最初にその一手を選ぶのか」という判断の理由は省略されがちです。図形問題で補助線を引く、英語長文で先に設問を読む、化学で単位をそろえる——こうした入り口の判断こそが、初見の問題で差になります。解説を読みながら「この問題のどこを見たら、この方針が浮かぶのか」を一言メモしておくと、次に似た問題に出会ったときの反応速度が変わってきます。

5. 1週間以内に、そして1か月後にもう一度

復習のタイミングにもコツがあります。人の記憶は、悔しさや驚きといった感情が伴っているときに定着しやすい。だから模試の復習は返却から1週間以内が勝負です。「間違えて悔しい」という感情が残っているうちに手をつけると、記憶への刺さり方がまるで違います。

そして、ここからが差のつくポイント。1か月後にもう一度、同じ問題を解いてください。一度復習しただけの内容は、驚くほどきれいに抜け落ちています。1か月後に解いて解けたなら、それは本当に身についた証拠。解けなければ、まだ「わかったつもり」だったということです。模試のファイルに「再チャレンジ日」を書いた付箋を貼っておくと、忘れずに実行できます。

6. 判定に振り回されず、「点差」で見る

志望校判定のE判定を見て落ち込む必要はまったくありません。特に高校2年生や、部活を引退したばかりの3年生にとって、この時期の判定は「今のペースのままだったら」という仮定の話にすぎないからです。

見るべきは判定のアルファベットではなく、合格ラインまであと何点なのかという数字です。「あと40点」とわかれば、「英語の長文で15点、数学の大問2で15点、理科の記述で10点」というふうに、教科ごとに分解できます。40点は絶望的な差に見えても、3教科に分ければ十分に届く距離です。目標は大きな塊のままだと動けません。小さく割って、今日やることに変換しましょう。

7. 保護者の方へ:最初のひと言を変えてみる

模試の結果が返ってきたとき、つい「何点だった?」と聞きたくなりますが、この最初のひと言が、お子さんにとって模試を「怖いもの」にするか「使えるもの」にするかを分けます。

おすすめは「どこが一番くやしかった?」という聞き方です。点数ではなく中身の話が始まりますし、お子さん自身が課題を言葉にする練習にもなります。結果が振るわなかったときこそ、「次はここを取れそうだね」と一緒に伸びしろを探してあげてください。責められないとわかっている子どもは、模試の結果を隠さなくなります。それが何より、次につながる環境です。

まとめ:模試は「受けた日」より「その後の1週間」

模試や実力テストは、うまくいかないと落ち込むものです。でも、点数が低かったということは、まだ使っていない伸びしろがそれだけあるということ。今日お伝えしたことを全部やる必要はありません。まずは間違いを4つに分類するところから始めてみてください。それだけで、次に何をすべきかがはっきり見えてくるはずです。

今の点数は、あなたのゴールではなくスタート地点です。1枚の答案を丁寧に使いきった人だけが、次の模試で静かに順位を上げていきます。夏の頑張りは、必ず少し遅れてから数字に出てきます。焦らず、答案と向き合う時間を今日つくってみましょう。応援しています。